2017年現在、無料(フリー)で使えるサービスが世の中に溢れています。
Google、Youtube、Facebook、Twitter、LINE、ソーシャルゲームなど…数えればキリが無いほどに、多くのサービスのほとんどの機能を無料(フリー)で利用できます。現に今あなたもこの記事を無料で読んでいると思います。
ではなぜ無料(フリー)なのか?
もちろん理由があります。GoogleもFacebookもボランティアではなくビジネスをしています。それもめちゃくちゃ面白いビジネスを。
- 無料で利用できる数々のサービス達がなぜ無料(フリー)なのか?
- 無料(フリー)とはどういうことなのか?
- 無料(フリー)から稼ぐにはどうすれば良いか?
これらについての深い考察を著者は「FREE(フリー)」の中で行っています。今となっては当たり前になった無料という価格の本質が、「FREE」には余すところなく書かれています。
目次
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FREE(フリー)を簡単に説明
「世界的ベストセラー『ロングテール』の著者が描く21世紀の経済モデル」
「〈フリーミアム〉という新しいビジネスモデルを提唱し、ビット世界の無料経済に正面から取り組んだニューヨーク・タイムズ・ベストセラー」
なぜ、一番人気のあるコンテンツを有料にしてはいけないのか?
なぜ、ビット経済では95パーセントをタダにしてもビジネスが可能なのか?
あなたがどの業界にいようとも、〈無料〉との競争が待っている。
それは可能性の問題ではなく、時間の問題だ。
そのときあなたは、創造的にも破壊的にもなり得る
このフリーという過激な価格を味方につけることができるだろうか?
(amazon「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」商品説明より)
アメリカの技術誌「Wired」の編集長を12年間務めた「クリス・アンダーソン」の「ロングテール」に次ぐ2冊目の著作です。
発売は2009年で、2017年の現在ほど無料という価格が当たり前でない時代でした。その時代にクリス・アンダーソンは、今後、フリー(無料)が世の中を席巻するという説をこの本で唱えていました。
「FREE」が発売された当時、私は大学生。発売後すぐに手に取った私は「面白いけど本当に世の中はこのようになっていくのだろうか」という感想を持ったことを覚えています。
8年経った今、実際に多くの無料で利用できるサービスが人々の生活に溶け込んでいます。そんな中、再度「FREE」を手に取って読んでみると、当時のクリス・アンダーソンの主張のことごとくが現実のものになっているように感じます。
改めて読んだ際、特に面白かったのがYoutubeに関する部分です。
FREE(フリー)内での「Youtube」に関する著者の考え
個人的に面白かった部分を一部抜粋します。
ユーチューブは「クズばかり」だからテレビの脅威にはならないだろう、と言う人がよくいる。クズばかりなのは、私も本当だと思う。ただ、何を「クズ」と思うのかは人それぞれに違う。その反対の「質のよいもの」だって同じだ。おもしろいネコの動画を探している人には、私が気に入っているハンダづけのやり方の解説動画はまったく興味がないだろう。同様に、私はテレビゲームの超絶テクニックなら見てみたいが、料理の講習にはなんの興味もない。(「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」より)
さらにこう言っています。
私たちが選ぶのはいつでも、自分が求めていない「質の高い」動画ではなく、「質が悪く」ても、求めている内容の動画なのだ。(「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」より)
私は本当にこの通りだと思いました。ネット上にあるコンテンツ、文章だろうが画像だろうが動画だろうが、その質の良さよりも、私も含めたユーザーは自分が興味を持っているものを求めています。
テレビなどではそうもいきません。お茶の間でみんなが楽しめるようなコンテンツが理想だと思います。家族と一緒にドラマを観ていてエロいシーンが出てきたら気まずくなりますしね。一人で観てる時ならウェルカムなんですけどね。
つまり、テレビなどは最大公約数的な面白さが必要なのだと思います。
一方、ネット上のコンテンツであれば、誰でもネット上にコンテンツを置くことができるため、無数のコンテンツが存在します。その中で、その時の自分が求めているものだけを選んで消費することができます。
もちろん、今でもテレビの前で他の人と楽しい時間を共有するという体験は価値があるものだと思います。しかし、今後より一層コンテンツが個人向けになっていくのを止めることはできません。
FREE(フリー)内にある「Youtube」と「Hulu」のビジネスモデル
Youtubeと同じ動画配信のサービスではあるが似て非なるサービスのHulu。その2つのサービスを、今の日本と8年前のアメリカとで比較しながら簡単に紹介します。
アメリカ
(2009年) |
日本
(2017年) |
|
Youtube | 広告なしの無料 | 広告ありの無料
+ 有料動画あり |
Hulu | 広告ありの無料 | 期間限定で無料
+ それ以降は有料 |
「FREE」の中でも登場するこの2つのサービス。当時のアメリカではYoutubeは広告なしの無料視聴可で、Huluは広告ありの無料視聴可でした。それが現在ではYoutubeは広告ありの無料+有料コンテンツありとなり、Huluは最初の二週間のみ無料で以降は有料となっています。
これらのサービスは、無料という破壊的な価格によって私たちの生活習慣に急激な速度で溶け込み、その後、広告付きや有料にされようとも、私たちユーザーはその便利さから離れられないために黙って従うことしかできません。
こう言うと聞こえ方が悪いですが、実際に私たちはその便利さから対価である煩わしい広告を見ることやお金を払うことに喜んで耐えています。払わないで不便になることよりも対価を払った方が良いという判断で。少なくとも私はそうです。
無料でサービスを利用することが当たり前となった今だからこそ、この「FREE」を読むことで、無料という価格の強力さや恐ろしさなど新しい気づきがあると思います。
クリス・アンダーソンの他の本2冊+α
「FREE」の著者クリス・アンダーソンは他にも面白い本を世に送り出しています。ここではクリス・アンダーソンの本2冊と、似ている本1冊を紹介します。
似ている本ってなんだよ、となると思うのですが、パッと見クリス・アンダーソンの本っぽいしテーマも似てるんですよね。面白いし。似ている本は他にもあるのですが、特におすすめで似ている本を1冊選びました。
ロングテール‐「売れない商品」を宝の山に変える新戦略
ニッチ商品の集積が、メガヒットの収益を凌駕する! ITの進歩によって多数の非ヒット商品の管理・宣伝コストが限りなくゼロに近づくとき、ヒット主導型ビジネスに比肩する利益がもたらされる――ロングテール理論の提唱者で、『フリー』『MAKERS』でも知られるデジタル界の先覚者クリス・アンダーソンが、アイデア発見の経緯とその意味を探求し、ビジネスと文化の未来を示した画期的ベストセラー。解説/小林弘人(amazon「ロングテール」商品説明より)
初版が2006年発売のクリス・アンダーソンの1作品目です。聞いたことがある人も多いと思いますが、「ロングテール理論」の話です。かなり簡略化して言うと、Amazonのビジネスモデルについての話だと思えば良いと思います。面白い。
ロングテール‐「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
今日の起業家は、オープンソースのデザインと3Dプリンタを使って製造業をデスクトップ上で展開している。カスタム製造とDIYによる製品デザインや開発を武器に、ガレージでもの作りに励む何百万人というメイカーズ(モノ作る人々)が、いま、再び世界の産業構造を変えようとしている。
世界規模で進行する<メイカームーブメント>を決定づける一冊!(amazon「MAKERS」商品説明より)
2012年に発売されたクリス・アンダーソンの3作品目。ITによる革命が製造業にも移ってくるという話です。個人的な面白さで言うと、
「フリー」>「ロングテール」>「MAKERS」
でしたが、製造業に興味がある人にはおすすめです。
シェア ―<共有>からビジネスを生みだす新戦略
大規模なコラボレーションとコミュニティが生みだすフェイスブック時代の新しい〈シェアリング・エコノミー〉が、21世紀の社会と経済のルールを変えていく!
車や自転車、工具のシェアからモノのリサイクル、リユース、そして、お金や空間やスキルのシェアまで、インターネットとソーシャルネットワークによって今、かつてない多様なシェアビジネスが始まっている。大規模なコラボレーションとコミュニティが生みだすフェイスブック時代の新しい〈シェアリング・エコノミー〉が、21世紀の社会と経済のルールを変えていく!(amazon「シェア」商品説明より)
これが似ていると言っていた本です。見た目とか「FREE」にめちゃくちゃ似てません?出版社も同じですし、テーマ的にも意図して似ているようにしたのだと思います。クリス・アンダーソンが書いているわけではないのですが、かなり面白かったです。
簡単に説明すると、日本でも知名度が高くなってきているAirbnbやUberなどといった、モノや空間やスキルなどをシェアする経済についての話です。この本は数年後に読み返すと、また違った面白さが見つけられそうだなと個人的には思っています。
終わりに
今回ご紹介した本は、どの本も発売された当時は斬新でも数年経つと当たり前のようになってきているビジネスモデルに関する本ばかりです。
まだそれほど社会に浸透しきっていないものもありますが、数年後には当たり前になっている可能性もあります。
未来を考えながら読むのも面白いですし、浸透してきているビジネスモデルをより深く理解する目的で読むのもまた面白いです。
特に「FREE(フリー)」に関しては、望む望まない良い悪いに関わらず、その存在感は日に日に増すばかりなので、一読してみるだけでも強くおすすめしたいです。